有名人がチープカシオ? 価値観が崩壊した話

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※登場人物は全て仮名です。

週末の昼下がり、ベッドでゴロゴロしながらインスタを眺めていた私の目に飛び込んできたのは、レトロなデジタル時計の写真だった。

「チープカシオで旅する夏」

なんだそれ。チープって、安いってこと?でもオシャレ。レトロフューチャーな感じが妙にエモい。コメント欄を見ると「1500円なのに防水でサウナもOK」「ビル・ゲイツも使ってるらしい」「あいみょんも愛用」という言葉が並んでいる。

え、待って。千円台?

そこから私の脳内タイムマシンが、勝手に起動した。

3万円で買った「旅行用時計」の悲劇

1年前の私は、バリ島旅行を控えて張り切っていた。

「せっかくの海外だし、オシャレしたいけど、高い時計は持っていけないよね」

そう考えた私は、都内の雑貨屋で「カジュアルだけど安っぽくない旅行向けウォッチ」を探し回った。最終的に選んだのは、定価29,800円のナイロンベルトの腕時計。デザインはシンプルで、一応生活防水。

「これなら気兼ねなく使える」

と、当時の私は満足していた。ちなみにこの時点で、すでに矛盾が発生している。気兼ねなく使うために3万円使うという、よく考えたら意味不明な行動だ。でも当時の私は気づいていなかった。

で、バリ島で何が起きたか。

プールサイドに行く時、時計を外した。傷がつくのが怖くて。 ビーチに行く時も外した。砂が入ったら嫌だから。 ホテルを出る時は、盗難が怖くて金庫に入れた。

結局、ホテルの部屋でしか着けなかった。

3万円払って、室内用の時計を買ったことになる。アホか。

サウナで気づいた、元カレの先見性

インスタのコメント欄に「サウナでも着けっぱなしでOK」という言葉を見た瞬間、さらに遡る記憶が蘇った。

2年前、当時付き合っていた彼氏と山登りに行った時のことだ。彼は四角いデジタル時計をしていた。黒くて、なんというか、昭和のサラリーマンが着けてそうなやつ。

「ねえ、その時計ちょっとダサくない?」

私は軽い気持ちで言った。

「これ便利なんだよ。カシオだし壊れないし、防水だし」

彼は気にした様子もなく答えた。

その後、サウナに一緒に入った時、彼は時計を外さなかった。

「え、時計つけたまま入るの?」

私が驚くと、彼は当たり前のように言った。

「樹脂だから熱くならないし、防水だから問題ないよ。むしろタイマー使えて便利」

ああ、そうですか。

当時の私は「まあ、実用的ならいいけど」くらいに思っていた。そして今、インスタで「レトロでエモい」ともてはやされているそのデザインが、まさにあの時計だったことに気づく。

彼の方が100倍センスあったやん。

ちなみに別れた理由は「価値観の違い」だったけど、今思うと私の方が価値観おかしかったかもしれない。いや、話が逸れた。

「シンプルな時計」に4回騙された女

さらに思い出すのは、ここ2年で買い替えた時計たちのこと。

私は「ミニマルでシンプルな時計が好き」という謎の自己認識を持っていた。だから雑貨屋や量販店で、シンプルなアナログ時計を見つけては買っていた。大体4000円から6000円くらいのやつ。

1本目:電池が切れて、交換が面倒で放置。 2本目:防水じゃなくて、雨の日に濡れて壊れた。 3本目:秒針のカチカチ音がうるさくて、寝室に置けなくて結局使わなくなった。 4本目:ベルトがすぐボロボロになって、見た目が汚くなった。

合計で2万円くらい使っている。

今、インスタで見たチープカシオの情報を整理すると、

デジタルだから秒針の音なし。 防水。 ベルトも丈夫。 電池も数年持つ。

価格:千円台。

私、何やってたん?

血の気が引いた瞬間

ここで私は気づいてしまった。

友人のリエが去年、タイ旅行に持っていった時計の話をしていた。

「シュノーケリングして、そのまま屋台でご飯食べて、ホテルのプールで泳いで、寝る時も着けっぱなしだった。洗えるし軽いし最高だった」

あの時リエが見せてくれた黒いデジタル時計。

アレだ。アレもチープカシオだったんだ。

当時の私は「へー、便利だね」くらいにしか思っていなかった。というか、正直ちょっとダサいと思っていた。でもリエは「これ最近また流行ってるらしいよ。レトロブームで」と言っていた。

私、完全にスルーしてた。

なんなら、その2ヶ月後に例の3万円の時計を買っている。

今すぐポチりたい衝動との戦い

スマホを握る手に、微妙に汗がにじむ。

過去の自分に対する恥ずかしさと、今すぐ買いたい衝動が入り混じる。

Amazonを開いて検索してみる。

出てくる出てくる。1000円台から2000円台の時計たち。デジタル、アナログ、メタルバンド、樹脂バンド、色違い、デザイン違い。レビュー見ると「20年使ってる」「壊れない」「コスパ最強」の嵐。

カートに入れる。1個。2個。3個。

気づいたら5個入っていた。合計で8000円くらい。

「いや、5個も要らんやろ」

と思って3個に減らそうとするけど、どれも魅力的で削れない。

デジタルの定番モデルは、ビル・ゲイツも使ってるという話がある。 メタルバンドのやつは、レトロゴールド感がたまらない。 アナログの薄型は、普段使いに良さそう。 防水性能が高いやつは、次の旅行で絶対使う。 デジタルとアナログが一緒になってるやつは、何か分からんけどカッコいい。

結局5個のままポチった。

届いた日、私は震えた

3日後、段ボールが届いた。

開封して並べてみる。5個のチープカシオ。

軽い。本当に軽い。 安っぽくない。むしろレトロで良い。 機能も意外と多い。

1個ずつ試着してみる。全部違う表情がある。これを千円台で買えるって、どういうこと?

そして試しに、一番防水性能が高いやつを着けたまま、シャワーを浴びてみた。

全く問題ない。

洗える。本当に洗える。これ、旅行で最強じゃん。

旅行に持って行く時計は、これで良かったんだ

翌週、友人たちとのサウナ旅行に、チープカシオを着けていった。

サウナ室でそのまま着けたまま入る。時間を測る。水風呂に入る。また測る。熱くならない。壊れない。

「その時計いいね、オシャレ」

友人が言う。

「これ、チープカシオって言って、千円くらいなんだよ」

「え、嘘。めっちゃ良い感じなのに」

帰り道、友人もスマホでポチっていた。

私が過去に3万円払って「気兼ねなく使える時計」を探していた行為が、本当に馬鹿らしく思えた。

高いものを大事にするより、安くて優秀なものを気兼ねなく使う方が、旅行はもっと自由だ。

そして次の旅行では、プールでも、ビーチでも、サウナでも、どこでも着けっぱなしで行こうと思う。

千円の時計が、私の3万円の失敗を粉砕してくれた。ありがとう、カシオ。そして過去の私、お疲れ様。

 

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